No.271の記事

早苗

東武東上線ときわ台駅で、女性を助けようとして電車に轢かれ、今なお重体の警察官がいる。
この話を聞いたとき、おそらく誰もが胸を締めつけられるような気持ちになっただろう。
自分の命を賭してまで、人を助ける義務は、いくら警官といえどもないはず。

今、彼が勤務していた交番は、花や千羽鶴であふれている。やはり、誰もが心を揺さぶられたのだと思う。こんなご時世に、とっさの行為とはいえ、相手をかばうようにして重体になってしまった彼の行為に。
おそらく考えた末の行動ではないと思う。職務に忠実に生きてきた、人のために働いてきた、彼の人生観が、そのままその行動に表れたのだろう。

単なる美談で語られてはいけないと思う。こうやって仕事をしている人たちが実際にいるということ、彼だけではなく、他の警察官も、火の中に飛び込んでいく消防官も、いわゆる海猿と呼ばれる海上保安官も、山岳救助隊も。

地道にがんばって働いている人たちに、もっと光が当たる世の中にならないと。お金で買えないものはない、と言った人がいるけれど、世の中、お金で買えないものはたくさんある。